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『わがままいっぱいの国』 第8章 帰り

2012.01.16 (Mon)

第八章  帰り


  五人が宮殿からでてきたとき、ミッシェールが友だちにこういいました。
 「わたし、もう、わがままを三万六千ももっていないわ。たったひとつもっているだけよ。」
 「わたしもそうよ!」
とエリアーヌがいいました。
 「わたしだって同じだわ!」
とオデットもいいました。
 「ぼくだって!」
とジェラルドとオリビエが口をそろえていいました。
 「わたしのたったひとつのわがままは、わたしんちへ帰ることよ。」
とミッシェールがいいました。
 「わたしのも、家へかえることよ。」
とオデットとエリアーヌがいいました。
 「ぼくらだってそうさ。」
とジェラルドとオリビエもいいました。
 三人の子どもたちは、顔を見あわせて、どっと大笑いしました。
 それから、ジェラルドがこういいました。
 「ただ、家に帰るのにはつばさを見つけなければいけないだろう。でも、ぼく着がえ室の番号を忘れちまったよ。」
 すると、ミッシェールがいいました。
 「つばさなんか必要ないわ。ほら、みんな、まほうの棒をもってるじゃないの。だから、
『また、じぶんのベッドにもどりたい』っていうだけでいいのよ。みんな、じぶんのベッドにもどれるわ。」
 「じゃ、やってみよう・・・・・・はじめにオリビエがやってみるといい。いちばん小さいんだから。」
 オリビエがまほうの棒をふって、
 「ぼくのベッドへもどりたい。」
といいました。すると、たちまち、かれはきえてしまいました。
 「ほら、とてもうまくいくじゃないの。」
とエリアーヌがいいました。
 とうとう、ミッシェールの番がきました。
 かの女はまほうの棒をふって目をとじると、
 「わたしのベッドへもどりたい。」
といいました。
 すると、たちまち、かの女の目には、みどりに波うつ森の上にかかっている、秋の色をした大きな道が、また見えました。それはまるで、映画のフィルムをさかさまに早くまわしたように見えました。それから、砂ばくの白い砂が目にうつりました。さらに、はるかかなたに、小さな火山がふきだす赤いほのおがみとめられました。
その赤いほのおが大きく広がってきました。
 そして、ミッシェールは目を開きました。
 ミッシェールは、じぶんのへやのなかにいました。
 すでに、だれかがよろい戸をあけていて、太陽の光が明るくかけぶとんをてらしていました。
 へやのなかは、なにひとつかわっていません。ひじかけいすの上には、うすいブルーのきぬの服を着た、ミッシェールの大きな人形がのっています。だんろの上には、かの女が市でかった、赤と白のガラス製の船がのっています。かべには、両親とおとうとたちの写真がかかっています。
 ねえさんが、ドアの近くにたっていて、こういいました。
 「さあ、おきなさいよ。もう授業にだいぶおくれてるのよ。」
ミッシェールは目をこすって、おきあがりました。かの女は、またじぶんの家に帰ってこられて、勉強ができると思うと、とても満足でした。頭のなかで午前中の授業のことを考えようとしましたが、それだけは、いくら考えてもむだでした。
 ミッシェールは、でたらめカラスのことや、セレストさんのことや、女王さまのことを考えました。すると、家家の上をとんで学校へいきたくなりました。そこで、「わたしのつばさはどこにあるの?」とねえさんにたずねました。ねえさんはびっくりした顔でいいました。
 「つばさですって?・・・・・・歩くのに二本のじょうぶな足をもっているじゃないの。」
 学校へいってみると、エリアーヌもオデットもきていました。でも、ミッシェールはふたりのそばにはこしをおろしませんでした。だから、ふたりにはまほうの果じゅ園のことは話しませんでした。
 たちまち、ビュバール先生のきびしい声がとんできました。
 「ミッシェール!なにを考えているんです?」
  「なんにも考えていません、先生」
 「じゃあ、立っておぼえてきたぐう話を話してごらんなさい。」
 ミッシェールはたちあがると、ぐう話の最初の一行はどうだったかしらと考えながら、からだをかるく左右にゆすりました。やっと最初の一行を思いだしました。
 『カラスの親方が、まど口にこしをおろして、くちばしの上にめがねをかけました。』
 とたんにビュバール先生が大声をあげました。
 「ミッシェール、あなた、気でもくるったの?すわってよろしい。あなたはれい点よ。先生は、じぶんをごまかすひとは大きらいです。」
 ミッシェールは席にすわりましたが、はずかしい気持ちでいっぱいでした。でも、あんなぐう話が口からでてくるなんて、どうしたんでしょう?たしかに『カラスの親方』はいたけれど、こうして遠くはなれてみると、こんなにはずかしく、おそれいった気持ちになるなんて・・・・・・。
 それにしても、ミッシェールは、あのでたらめカラスさんを、どこで見たのでしょう?
 こういうことがすべて、ぼんやりかすんでいってしまったのです・・・・・・そして一時間もたつと、ミッシェールはもう、そういうことを考えなくなりました。
 それから、何日もたちました。ミッシェールは、まほうの果じゅ園のことをすっかり忘れてしまいました。かの女は大きくなり、ふたりのおとうとともっとなかよくしてゆこうと努力しました。それに、人形にもあき、そのかわり、本を読むようになりました。
 こうして、ミッシェールは八さいになり、やがて九さいになりました。
 九さいのおたんじょう日は、かなしい思いをしてすごしました。というのは、かの女はこのおたんじょう日を前からたのしみにしていたのですが、その日がやってきてみると、かの女の思いどうりにはいかなかったのです。
 その日、ふたりのおとうとはミッシェールに美しいおくりものをしてくれましたが、すぐに、かの女をからかいはじめました。ミッシェールは、知らん顔をして、おとうとたちのあいてをしましたが、それから一日じゅう、おとうとたちはかの女としゃべろうとはしませんでした。
 それに、ミッシェールはエリアーヌとオデットをしょうたいしていたのですが、あいにく、ふたりともハシカにかかっていて、こられませんでした。
 とてもさびしい、おたんじょう日の夜でした。
 ミッシェールはねえさんに、こういいました。
 「きょうはわたしのおたんじょう日よ。だから、わたし、十時にならなければねないわよ。」
 すると、ねえさんがきびしくいいました。
 「いけません。あなたはとてもつかれてるわ。ほら、もう目をあいていられないじゃない。いつもより早くねなければだめよ。」
 こうして、ミッシェールは早くねかせられることになりましたが、頭をまくらにあてながら、(あーあ!なにもかも、たいくつだわ!また、わがままがいっぱいできる国へいきたいなあ。)と思いました。
 たちまち、あの旅のことを、つばさのことを思いだしました。そして、
 「あのみどりの波が大きくうねる森の上を、もう一度とんだら、きっと気持ちがいいだろうなあ。」
とつぶやきました。すると、あの広いまっ白な砂ばくと、石のぼうしをかぶったファラオ王が目に見えてきました。ミッシェールは、まっすぐ、ファラオ王のところへいきました。そして、
 「ファラオ王さま、こんにちは。わたしのことをおぼえていらっしゃる?」
とたずねますと、ファラオ王がこう答えました。
 「おぼえているよ。あの三羽の白いニワトリと三羽の黒いニワトリのゆめのことを、わしに説明してくれた少女さ。」
 「あのとき説明してあげたとおりになりましたの?」
 「いや、ならなかった・・・・・・まるきりちがったね・・・・・・でも、わしは、自信をもって待っていたよ。まあ、すわりなさい。」
 ミッシェールは小さな火山のふもとにすわりました。すると、ファラオ王がなにかききたそうな顔をして、ミッシェールのほうにかがみこみました。
 「わしはね、こんや、またべつのゆめを見たのだ・・・・・・そのゆめをわしに説明してくれるかな?」
 「どんなゆめでした?」
とミッシェールは、ため息をつきながらたずねました。
 ファラオ王が話しました。
 「こういうゆめだ。わしは、ナイル川のほとりにいるようだった・・・・・・とつぜん、六ぴきのオレンジ色のカメと六ぴきのむらさき色のカメが、川からでてくるのが見えたのだ・・・・・・こりゃ、いったい、どういうわけだろう?」
 「わけなんて、なにもないわ。」
とミッシェールが肩をすくめながら、いいました。これをきくと、ファラオ王はびっくりしてしまいました。
 「なんだって?・・・・・・」
 ミッシェールは話しつづけました。
「わけなんて、なにもないのよ・・・・・・第一、ゆめには、なんの意味もあるはずがないのよ。ほら、今だって、わたし、あなたとあってるゆめを見てるけど・・・・・・ほんとうは、あなたっていう人はいないのよ。」
 「なんだと。わしがいないんだって?だって、わしは古代エジプトの王だぞ。」
 「古代エジプトも、この世にないのよ。」
とミッシェールはきっぱりといいました。
 すると、ファラオ王が石のうでをふりあげました。ミッシェールは、とてもこわくなって、にげだしました。
 あとから、ファラオ王がおいかけてきましたが、さいわい、王の石の服が両足にからまってしまい、そのため王は早く走ることができませんでした。ファラオ王は、いくつかの砂の山のまわりをまわっただけで、とうとう見えなくなってしまいました。
 やがて、ミッシェールはラクダののり場を見つけました。列の先頭にいるラクダは、年とっていましたがとても親切で、このまえにミッシェールをまほうの果じゅ園につれていってくれたラクダでした。
 ミッシェールは、そのラクダにまたがると、その耳を下にさげてやりました。耳は前よりもいちだんとよごれているようでした。
 「まほうの果じゅ園へいけ!」
と声をかけると、ラクダが走りだしました。
 ラクダが二百メートル近く走ったとき、ふりかえると、ずっとうしろの砂ばくの入り口のところにファラオ王があらわれるのが目にはいりました。ファラオ王は、あの石の横顔をこちらにむけて、こうさけんでいました。
 「ああ!わしがこの世にいないんだって?・・・・・・いまに見ていろ!」
 でも、そのすがたも、たちまち見えなくなってしまいました。
 三時間後、ミッシェールはでたらめカラスさんのまど口の前にたどりつきました。かの女はまど口に近ずいて声をかけました。
 「はいっていいかしら?」
 「あんたは、だれかね?」
とでたらめカラスがたずねました。その声は、前よりも少ししわがれているようでした。
 「ようせいのミッシェールよ。」
 「ようせいだって?・・・・・・はて、ようせいねえ?・・・・・・あんたは、ちっとも、ようせいみたいには見えないがねえ。」
 「なんですって?・・・・・・あなたはもう、わたしのことを忘れちゃったの?」
 こういいながら、ミッシェールは、古い厚紙をカラスのほうにさしだしました。ふしぎなことに、その厚紙は、いつのまにか、ミッシェールのポケットのなかにはいっていたのです。

 第二級のようせい、ミッシェール嬢にまほう王国全土の通行をゆるし、この国で、三万六千のわがままをすることをきょかするものである。
                         門番でたらめカラス
 女王陛下に


 でたらめカラスはミッシェールの顔をみつめました。そして、とてもうたがい深そうな目つきでいいました。
 「こりゃ、だめだ。この証明書はきげんがきれている。」
 「きげんがきれているですって?・・・・・・それ、どういうことなの?」
 カラスがいいました。
 「わしは知らんね・・・・・・とにかく、それは・・・・・・いや、いや、おじょうさん、この証明書じゃ、はいることはできないよ。テストを受けなくちゃならん。」
 「いいですとも。」
とミッシェールは、自信たっぷりに答えました。
 だって、今ではミッシェールはとてもよく勉強をしていました。それで、学校の成績がクラス一番になったことが二度、二番になったことが一度あったくらいでした。だから、かの女は自信があったのです。
 カラスが質問をしはじめました。
 「まず、算数の問題。十二かける十二はいくつかね?」
 「百四十四よ。」とミッシェールは答えました。
 ところが、カラスはなにもいわないで、うなずいただけでした。まるで、「だと思うね」といわんばかりでした。
 「つぎは歴史の問題。ルイ十三世のおとうさんはだれかね?」
 すかさずミッシェールは答えました。
 「アンリ四世よ。これでいいでしょ?」
 しかし、でたらめカラスの顔はみるみるうちにかなしげになり、なにも答えませんでした。
 ただ、最後にこういいました。
 「これ以上質問してもむだだ。あんたは、もう、まほうの果じゅ園にはいることはできないだろうね、ミッシェールさん。」
 さいわい、ラクダは待っていてくれました。それで、ミッシェールは、その夜のうちにじぶんの家にもどることができました。  
       (おしまい)

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