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『わがままいっぱいの国』 第5章 すてきできままな女王様 
第五章 すてきできままな女王様


まほうの国の女王さまの宮殿は、ガラスでつくってありました。宮殿は、なん本もの水晶の円柱でささえられ、全体がバラ色にかがやいていました。
 ミッシェールはおどろきの声をあげました。
 「まあ!この国ではバラの花とリンゴの花が、おなじ時期にさくのね?」
 オリビエが答えます。
 「どんな花も、さきたいときにさくのさ。まほうの国の女王さまは、一日に二度も自分の住む家をかえちまうんだよ。あの宮殿だって、けさは、ピエールおじさんの家ににていたけれど、きのうは、バガテルの宮殿ににていた。でも、今は、なににもにていないようだね。」
 「なかにはいることができるの?」 
 「はいりたければ、はいれるさ。」
 宮殿の入口には、見はりはひとりもいませんでした。玄関には手紙が山とつんであり、どの手紙もまだ開いてありませんでした。 そして、まだおひるだというのに、宮殿の電とうはみんなともっていました。
 子どもたちは図書館を通りぬけていきました。この図書館には何千さつという本が置いてありましたが、どの本もあたりかまわず放りだしてありました。まるで本の山でアーチ(半円形をした門)がつくってあって、その下を通りぬけていくみたいです。
 「パパの書さいみたいだわ。」
とミッシェールがいいました。
 「いや、パパの書さいよりちらかっているよ。」
とジェラルドがいいました。
 みんなが応せつ間にはいっていくと、そこ女王さまがたっていました。
 女王さまはとても美しいかたでした。頭に小さなかんむりをかぶり、手にはまほうの棒をもっていました。それはほかのまほうの棒よりずっと美しくかがやいていました。
 女王さまは、そのまほうの棒をつかって、宮殿のなかの家具をみんなとりかえているさいちゅうでした。女王さまは棒を、見ていてもおかしいくらい早くふりまわしていました。
 たとえば、女王さまは、自動車がいっぱいこみ合っている町を描いた絵をじっと見つめていましたが、やがて棒をさっとふりました。すると、その絵は女のひとの横顔を描いた絵にかわってしましました。
 女王さまは、この絵を十分間ばかりながめていましたが、つぎに、もう一度棒をふりました。すると女のひとの横顔がきえて、かわりにインドの宮殿があらわれました。その宮殿の前には黒と赤のゾウが水をあびています。
  ジェラルドが大声で笑いだしました。すると、女王さまがふりかえって、ジェラルドにこういいました。
 「おや!おねえさんをつれてきてくれたのね。こんにちは、ミッシェール。あなたをまってたのよ。あなたのおかあさんも、子どものころここにきて、しばらくここで、わたしたちといっしょにいたのよ。だけど、とうぜん、わたしたちのところからはなれていかなければならなかったわ。」
 「どうして、とうぜんなんですか?」
とミッシェールがたずねました。
 すると女王さまは、まほうの棒でテーブルをランプに変えながら答えました。「どうしてって、だれもこの国に長くいることはできないからよ。あの地面たたきさんはべつだけれど、そのほかのものは、だれだって、この国に十二年以上いなかったのよ。」
 すかさず、ミッシェールがいいました。
 「それに、女王陛下もべつですね。」
 ミッシェールはこういう場合、女王陛下というべきであることを知っていたので、とてもほこらしく思いました。
 女王さまがこう答えました。
 「あら!わたしはちがうわ。わたしは気まぐれですもの。」
 そういいながら、女王さまはまほうの棒を近くにあるいすのほうにむけました。いすはたちまちタンスに早がわりしてしまいました。
 子どもたちは顔を見合わせました。
 そして、エリアーヌがおそるおそるこういいました。
 「女王さま、わたしたちは、これからなにをしたらよいのでしょうか?」
 「それ、どういうこと?」
 「つまり、わたしたち、どこへいったらよいのでしょう。なにか、きまりでもあるのでしょうか?」
 女王さまが、まほうの棒を天じょうにむかってふりあげました。すると、その天じょうは、すぐさま美しいシャンデリアに早がわりして、とてもすんだ声でこう歌いはじめました。


 ようせいたちよ、ただひとつのきまりはわたしたちの心のなかにあり、
 それこそ、すべての気まぐれをとりしずめるもの
 なぜなら、かしこいだけは、ばかということ、
 ぎょうぎがよいだけは、ぶさほうだから。


  子どもたちは、もう一度、顔を見合わせました。
 「あの歌、なにかしら?」
とエリアーヌがたずねると、オデットがいいました。
 「ぐう話よ。」
 「でも、だれがあんなぐう話をつくったのですか?」
とミッシェールが女王さまにたずねました。
 「それはあなたがたが思う通りかってにきめていいことなのよ。」
と女王さまは答えました。それから子どもたちにこうたずねました。
 「あなたたち、チョコレートをたべたくない?」
 こういったかと思うと、女王さまはそばにあるテーブルにむかって、まほうの棒をふりました。すると、そのテーブルの上にヒシ型をした箱があらわれました。
 女王さまはふたたび棒をふると、それをアメにかえてしまいましたが、ミッシェールたちにアメをくばるのはわすれてしまいました。
 それから子どもたちをドアのほうへ案内していきながら、こう歌いました。


 歌え、話せ、さけべ、わめけ、たたけ、
けんかせよ、わたしの親しい少女たち。
 なんでも好きなことをやってごらん、
 やればやるだけ、あなたがたは、
 ずっとおとなしくなるから。


 ドアのところで女王さまがいいました。
 「きょうの午後、宮殿でお祭りがあるわ。みなさんがたをおまちしていますよ。・・・・・・でも、あなたがたのおこのみしだいで、きてもこなくってもいいのよ。」
 ミッシェールが答えました。
 「陛下、お気のままに。」
 

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